2026.05.18
2026.05.18
「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。
僧侶・歌手 柱本 めぐみ
十数年ぶりに原爆ドームを見て、平和記念資料館に行きました。私の記憶よりもたくさんの写真や遺品が展示されてあり、当時を伝えるものがよくこれだけ残されていたものだと思いました。あまりにも酷(ひど)い光景でシャッターを押すのに躊躇(ちゅうちょ)したという説明もありましたが、原爆の惨状を後世に伝えるために当時から今に至るまで多くの方が尽力されたのでしょう。ところが折角(せっかく)の展示を見ているうちに、私はかつて感じたことのない恐怖感を覚えて殆(ほとん)ど正視することができなくなってしまったのでした。
そして何よりこころが痛んだのは、あの8月6日以前の子供(こども)たちの屈託のない笑顔の写真であったり、届けられるはずであった手紙であったり、また、親を亡くした子供たちの施設の写真でした。戦時下にあったとはいえ、明日の楽しみ、将来の夢があったであろう人たちの生活が奪われた事実に、ただただ悲しい気持ちになったのです。

中学校の修学旅行で広島に行く前に、原爆投下から終戦のことを自分たちで調べて勉強したことを覚えています。それ以降も戦争、原爆について経験者からも話を聞いたりしていますから、戦争の恐ろしさは十分に知っています。また、残念なことに今も国同士の争いが絶えず、信じられない映像をテレビの報道などで見て、戦争はあってはならないものと強く思っていたはずでした。しかし、その地に立ってみることで、単なる情報ではなく、犠牲になられた方のお声が直(じか)にこころに伝わってきたように思えたのでした。
80年以上の時を経てきれいに整備された市街を歩きながらふと見上げると、雲ひとつない青空が広がっていました。気持ちのよい春の1日でしたが、そのすき通った空は悲しみを秘めながら私たちを見下ろしているような気がしました。
戦争はもちろんのこと、傷つけ合うことのない世界を切に願うと同時に、あたり前だと思っている日常に感謝し、大切に生きたいと思う日となりました。
はしらもと・めぐみ氏
京都市生まれ。京都市立芸術大卒。歌手名、藤田めぐみ。クラシックからジャズ、シャンソン、ラテンなど、幅広いジャンルでのライブ、ディナーショーなどのコンサートを展開。また、施設などを訪問して唱歌の心を伝える活動も続けている。同時に浄土真宗本願寺派の住職として寺の法務を執り行っている。