ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

AIへの法律相談

2026.06.22

  • コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

弁護士 尾藤 廣喜

 ある法律相談のことである。守秘義務の関係で詳細は言えないが、「私の今やっていることが生活保護法に照らして問題かどうかを教えて欲しい」との内容だった。聞いてみると、相談者がAI(人工知能)に相談したところ、「あなたのしていることは法に違反しています。このことを福祉事務所が知れば、刑事告訴され、処罰されるおそれがあります」とのことだったので、心配になり、対面で弁護士の意見を聞きたいとのことだった。しかし、事実関係の詳細をお聞きしてみると、問題のない事例であり、AIの回答が全く誤っていることが明らかになった。私が、この事案への対応策をアドバイスしたところ、「安心しました」と喜んで帰られた。

 この相談では、相談者がAIの回答に疑問を持ち、法テラスを活用して無料相談するという賢明な手続きをとられたところから、相談者は、余計な心配をしたり、不要なトラブルに巻き込まれたりすることがなかったが、このような手続きをもし取られなければ、どうなっていたのかと思う。しかも、AIは、回答内容に責任を持ってくれない。

 書面でのAIの回答を見ながら原因を考えてみた。2つの原因がある。1つ目は、相談者が、事案の中で決め手となる部分の事実を伝えていなかったこと。相談者は、自分の聞きたいことをひたすら問いかけており、肝心の前提事実が一部伝えられていなかった。2つ目は、法の解釈を誤っていること。生活保護の分野では、実務の細かい問題について書かれた論文が極めて少ない。しかも、誤った俗説が無批判に広く流布されており、これが、回答に大きな影響を与えたものと思われる。

 AIについては、著作権の侵害やフェイクニュースの流布などさまざまな危険性が指摘されているが、法律相談という市民が法的サービスに接する窓口として極めて重要なところでの誤りは重大であり、何らかの規制が必要であると痛感された。

びとう・ひろき氏
1970年京都大法学部卒。70年厚生省(当時)入省。75年京都弁護士会に弁護士登録し、生活保護訴訟をはじめ「貧困」問題について全国的な活動を行っている。