ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

えへ EHE

2026.06.29

  • コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

平等院住職 神居 文彰

 木版摺(ず)り「當年(とうねん)星祭之札」を整理している。

 雲上の天女が右奥から左手前に来迎(らいごう)する姿が摺られている。右手に持つ笏(しゃく)にはIHSとあり下部には同版でChristuとある。天地が43㍉以上あり明らかに隠れ切支丹(キリシタン)の礼拝対象であろう。別摺りでは大きなクリスが象徴的に摺り足されていたり、文化元年や三年など年号の追筆が施されているものもある。

 星祭りは、北斗七星による運命星を供養するもので、ベツレヘムの星と親和性を持たせうる。

 光の階調はRGBという三原色ではなくグレーという光度の強さのみの情報であり、加減混色とは異なる。

 文化二(1805)年、島原藩では切支丹による仏葬祭を止めた天草崩れが起こり五千人以上が検挙されるが全て無罪となっている。

 最初期の踏み絵は紙製。この時期では銅製のものを置き全員がそれを踏んでいる。実際に踏むようで、臨検者はその場の空気感で判断するらしい。皮相的な所作より信仰への強い意志と笑い飛ばす力量が垣間見られ、赤瀬川源平の千円札裁判と刑法九二条(外国国章損壊等)の規矩準縄(きくじゅんじょう)とがどこか透視される。

 むかし赤瀬川氏からLeica(ライカ)を促されたが、四半世紀経過し広角18㍉で空気を撮(うつ)し込むことが可能な1機として、ようやく手に馴染(なじ)みつつあるように思う。

 8月には50周年となる「コミックマーケット108」が東京ビッグサイトで開催される。世界最大級の同人即売会である。

 1959年、横山泰三を中心にやなせ・たかしら若手中堅の漫画家11人による「描きたいものを描く」というコンセプトで同人雑誌『えへ EHE』が発刊された。漫画や視覚文化、グラフィックデザイン史の金字塔といわれ、ウイットに富む自由な表現は今なお色褪(あ)せない。創刊表紙は長新太、スポンサーなし自費を持ち寄って制作された。二号では昭和34年神父の殺人疑惑スチュワーデス事件を風刺している。

 えへは他国をも笑いで志向するという。複合語の「Mischehe(ミシェヘ)」は、宗教を越えた異宗婚を指す。

 柔軟な心と円転滑脱な世界に生きる姿を想像した。

かみい・もんしょう氏
大正大学大学院博士課程満期退学。愛知県生まれ。1992年より現職。現在、美術院監事、埼玉工業大理事、メンタルケア協会講師など。