ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

面会制限緩和、ようやく

2026.07.20

  • コラム「暖流」

「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。

ACT-K主催、精神科医 高木 俊介

 コロナ禍はこの国に様々(さまざま)な傷痕を残した。病院で行われていた面会制限が、今日まで理不尽に続いていることもそのひとつである。諸外国ではコロナが収束すると面会制限はすぐに解かれたし、日本のように常時マスクを着装させられることもない。これらをむやみに続ければ、コロナ禍で様々に損なわれた医療への信頼をさらに低下させる。面会を制限したほうが、病院の業務が楽なのだろうと疑われても仕方ない。

 家族や親しい知人との面会は病気の療養にとって大切なことだ。病気の治癒にも促進的である。そして何よりも、人との絆を保つことは大切な人権である。

 惰性で続けられているとしか思えない面会制限によって、家族の死に目にすら会えなかった、孫の顔さえ見せられなかった、認知症が進んで家族の顔さえ忘れていたという悲劇が日本のあちこちで起こっている。

 病院が人権をないがしろにしているこの状況に、厚労省もさすがに業を煮やしたようだ。この6月からの診療報酬改定に際して是正が図られた。「退院支援加算」という退院時の指導を請求する要件として「正当な理由なく面会を妨げないこと」と、面会制限の緩和が必須とされたのだ。

 この加算は入院1人につき7千円と大きい。これを算定するためには、面会制限を行っていればその「正当な理由」を届け出て、患者にも周知しなければならない。現在の平常時の感染状況で、感染対策を理由に面会制限を行うことはできない。ましてや病院の業務理由で行ってはならない。

 だが、黙っていては病院という巨大組織はなかなか動かない。患者自身が入院料請求書を注意深く見て、面会制限されているのに加算を請求されていないかを監視する必要がある。「人権」は座して待っていては得られないのである。

 そして医療従事者は、近年、医療への信頼が揺らいでいることに往々にして無頓着である。このままでは皆保険制度すら危ない。そのことを謙虚に受け止めておきたいものである。

たかぎ・しゅんすけ氏
2つの病院で約20年勤務後、2004年、京都市中京区にACT-Kを設立。広島県生まれ。