2026.07.27
2026.07.27
「ともに生きる」をテーマにした福祉コラムです。
僧侶・歌手 柱本 めぐみ
所用あって京都駅から電車に乗りました。遠いところに旅に出たわけではありませんでしたから窓から見る風景は特別なものではありませんでした。洗濯物が干してある家にも幼稚園の園庭にも、会社の大きなビルにも強い日差しが照りつけ、青々とした田んぼや畑が広がり、また、ところどころに雑草が鬱蒼(うっそう)と生えている空き地が見えたりする景色に「ああ、今年も夏になったのだなあ」と思いました。歳を重ねてきたからでしょうか。あたり前のことなのに妙にこころに染み入るものを感じながら、私は何を考えることもなく盛夏の景色をずっと見続けていました。電車から降りたとき、私はなぜか足取りが軽くなっている気がしました。

去年の夏にも同じような気持ちになったことを思い出しました。行ってみたいお寺があり、昼間は暑いので開門と同時に訪れました。庭ではお寺の方がお掃除をしておられて「おはようございます」と声をかけていただきました。蟬(せみ)の声が頭の上から降ってきていて「今日も暑くなりそうですね」とことばを交わすと、「この時間に来ていただくとありがたいですね」と言われました。はたして、お寺の書院に座りますと、手入れされた庭が目の前に広がり、私のこころが荷物を下ろしたような感覚があり、ふと「今日も生きているんだなあ」と思いました。観光シーズンにはライトアップがある大きなお寺なのですが、一番乗りだったから出会えた貴重なひとときを過ごした私は、軽くなったこころを連れて帰ることができました。
私たちはいつも自分のこころと対話しながらあれこれ悩んだり、迷ったりして生きていて、無意識のうちに疲れていることがあるように思います。特別な楽しみや日常を離れて出かける旅行もリフレッシュになりますが、住み慣れた街には安堵(あんど)感があり、見慣れた景色もいいものだと今更ながら思ったのでした。
またちょっと早起きして、身近なところに私のこころの休憩所を探してみようかなと思っています。
はしらもと・めぐみ氏
京都市生まれ。京都市立芸術大卒。歌手名、藤田めぐみ。クラシックからジャズ、シャンソン、ラテンなど、幅広いジャンルでのライブ、ディナーショーなどのコンサートを展開。また、施設などを訪問して唱歌の心を伝える活動も続けている。同時に浄土真宗本願寺派の住職として寺の法務を執り行っている。