ともに生きる [TOMONI-IKIRU]

鍋を振り「子に希望を」

2026.08.24

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京都華僑総会会長、調理ボランティアを続ける 楊 正武さん

 楊(やん)正武さん(81)は12日、妻の愛玉さん(78)と京都新聞社会福祉事業団(京都市中京区)を訪れた。「児童養護施設の子どもたちに役立ててほしい」と、2人で苦楽を分かち合ってきた料理店「中華処楊」(下京区)の50周年に感謝をこめて50万円を寄付した。

 それに先立ち、楊さんは自身の誕生日にちなんで「愛の奨学金」事業にも寄付している。

 同事業団が1965年に発足以来続けている愛の奨学金事業は、誕生日に100円を乗じた金額の寄付を受け付けている。2026年度は、児童養護施設高校生への激励金を含め331人の学生に総額2994万円を贈った。

調理ボランティアを続け、児童養護施設の子どもたちのために寄付した楊正武さん・愛玉さん夫婦(京都市中京区)

 7月の贈呈式では奨学金を受けた大学生が謝辞で、地域医療への貢献や日本の魅力を発信する夢と希望をそれぞれ述べた。奨学金を贈る立場と選んだ委員のスピーチにも、次の世代へ善意のバトンを循環させる社会への熱い思いがこもっていた。

 楊さんが歩んできた道は、愛の奨学金事業の理念を体現している。貫いているのは、「子どもたちに希望と夢をいだいてほしい」という思いだ。

 中華料理人の集まり「琢磨(たくま)会」会長の経験とボランティア活動の実績が、京都市と府を越えて広く知られている。

 1982年に会を結成以来、料理の奉仕を全国27府県で1340回重ねた。

 95年の阪神淡路大震災でも被災した神戸市や芦屋市の小学校に出向いて調理した。2017年の全国社会福祉大会では厚生労働大臣からボランティア貢献賞を受けている。

 メンバーが高齢化して活動できる人数が減った24年に琢磨会の活動は幕を下ろした。それ以降も、「児童養護施設の中学生を祝う会」(中卒会)会長として調理ボランティアを続けている。

 楊さんによると、琢磨会活動の原点となった児童養護施設「青葉学園」(亀岡市)をはじめ各地へ足を運んでいるという。視覚障害者総合福祉施設「京都ライトハウス」(北区)の寮にも食材や器具一式を車で運びこんで調理を続ける。

 楊さんが示した一覧表には、24年から今年7月まで19回活動した施設名と料理提供数が記されている。

 「社会への恩返しの気持ちで続けてきました。料理を食べた若者が立派な社会人になり、50歳を超えてからも店を訪ねてくれる」と楊さんは話す。

 「鍋を振ることができる限り続けます」。来年3月にも中学を卒業する生徒を「楊」に招く予定について語る口ぶりは、はつらつとしている。

(秋元太一)

やん・まさたけ

1945年京都市生まれ、堀川高卒業後に中華料理調理の道へ進む。1982年に創設した琢磨会会長を、2024年まで務めた。京都華僑総会会長として2025年には、京都市と西安市の友好都市交流に尽力した功績から京都市自治記念式典で表彰された。