2026.10.05
2026.10.05
音訳ボランティア・NPO法人「ロバの会」理事長 端野 順子さん
目の不自由な方々に、生活に役立つ新聞記事や商品情報などを朗読してCDに吹き込み届けるのが、音訳ボランティアである私たち「ロバの会」の主な活動です。
多くの人に支えられ昨年、発足50周年を迎えることができました。前任の会長、山田新作さん(故人)は1963年に、京都ライトハウスの点字図書館で、蔵書音訳のボランティアを始めた方です。仲間と結成した「京都朗読奉仕会」が、やがて「NPO法人ロバの会」に発展したのです。
私が入会した90年は、録音にまだテープを使っていました。これを、98年にCD化するのに貢献されたのが、先輩会員の河野ゑみさん(故人)でした。
ご主人と共にアマチュア無線の技術を駆使して京都に限られていた利用者さんを、全国に広げたのも河野さんです。現在、約1000人が登録する「ロバの会」の利用者さんは、北海道から沖縄まで広く展開しています。
私たちが音訳してお届けするのは、新聞や雑誌の記事、医学、音楽情報などを集めた「ロバさんの万華鏡」と、高島屋の通販商品情報誌を年4回。プロ野球の選手名鑑を年1回。ほかに、マッサージ師、鍼灸(しんきゅう)師の国家試験問題の解答・解説集、新暦・旧暦対照の暦本、それと年に3冊ほどですが新刊書も音訳しています。

大手紙発刊の「点字毎日」の音声版は長く手がけ(年間25回)、無料奉仕の音訳が大半という中で、数少ない収入源の一つです。
音訳と校正、編集の作業は各会員が自宅で。音訳データのコピーや発送作業は、毎週水曜日に京都市中京区にある会の事務所へ集まって行います。
農家の一人娘に生まれた私は、幼少期に家人が田畑に出ている間、一人で本を読んだりラジオを聴く時間が多く、読むことには親しんだように思います。主婦となり「次男が中学生になれば、人の役に立つ何かを」と考えていた時、ある商品情報誌に「ロバの会」が紹介されているのを読んで、迷わず入会したのです。
私を含め専業主婦が多かったそのころに比べ、約30人いる今の会員さんは、多くが仕事を持つ人たち。音訳は根気の要る作業で、仕事とどうバランスさせ長く続けてもらうか、が課題です。
利用者さんの高齢化とIT、AI技術の急速な進歩により、活動が大きな節目を迎えているのは確かです。パソコンが音訳もする時代に、若い利用者さんが今後、それほど増えるとは思われません。
一方で、音訳された商品情報を聴くと「ウインドーショッピングをした気分になれる」と喜ぶ年配の方があります。毎年春にはプロ野球選手名鑑を心待ちに「まだですか」と、催促の電話がかかってきます。会員みんなが、やりがいを感じるうれしい電話です。
私たちを必要とする人がある限り、活動を止めることはできません。続けられる体制を整えるためにも新しい力が必要です。入会希望は常時、受け付けています。075(821)0844
はしの・じゅんこ
1948年、大阪府枚方市生まれ。大学卒業後、24歳で結婚。次男が中学生になったのを機に、福祉活動を志し90年、音訳グループ「ロバの会」に入会。会創始者の山田新作氏の後を受け2016年から理事長。過去に会が音訳した「ハンセン病文学全集(10巻)」の改訂版を、ことし3年がかりで完成させた。枚方市在住。