2026.11.02
2026.11.02
クリーンスペース株式会社代表取締役社長 橋本 味永子さん
保育士から中小企業の経営者に転身して22年になります。「クリーンスペース」(京都市伏見区)は2004年の創業で、産業廃棄物の処理、収集・運搬が専門です。廃酸や廃アルカリ、化学薬品の処理も手掛けています。
従業員12人のうち9人が障害のある人たちで、主にペットボトルのリサイクルに関する作業に携わっています。長く働いてもらうために、希望する時間に合わせた勤務体制を取り、9人のうち勤続20年の人が4人、19年の人が1人おられます。
私の叔父は伏見区で廃棄物処理の会社を経営していたのですが、火災で操業を一時停止。大腿(だいたい)骨の障害や、持病もある叔父から「社長になってくれ」と話があったのが2004年でした。
短大を卒業後、保育士になり結婚後も保育園で働き続けた私は、仕事が好きで40年、50年後も保育士を続けるつもりでした。それでも、叔父の願いを受け入れたのには、理由がありました。
仕事が忙し過ぎて、2人の娘に幼い時から十分にかまってやれなかった負い目があったのです。運動会や参観日にも行けないことが多く、叔父から「うちに来たら早く帰れるかも」と言われ、心が動きました。実際は保育士時代より忙しくなったのですが…。

ペットボトルの事業を始めた2006年に、障害のある人10人を雇用しました。叔父は、仕事の外注先だった障害者施設と交流があり、以前から「障害のある人が働きやすい福祉工場をつくりたい」と願っていたのです。
私が社長になり、新会社が動き出すと、障害のない従業員からは「利益が赤字部門に使われるのでは」といった戸惑いが生まれました。しかし、手作業でペットボトルのラベルをはがす彼らの仕事が、素早さや正確さで職人技の領域に近づき採算部門に成長したことが分かると、不安は解消。今は、同じ従業員同士の堅い協力関係ができ上がりました。
障害のある従業員の福利を考える中で「親なきあと」こそ、ご家族に共通する悩みと分かり、4年前に会社で伏見区に土地建物を取得してグループホームの運営を始めました。現在、2棟のグループホームに計10人が入居。5人が当社の従業員です。
グループホームの開設は、私が入会した京都中小企業家同友会での取り組みがきっかけでした。自社の目指す未来について、経営デザインシートを作成した際に、龍谷大の院生の人たちと意見を交換。私が会社近くにグループホームを開設する構想を示したところ、有益な助言をもらい、金融機関の方ともつながって、1年後に夢がかなったのです。
グループホームは、障害のある従業員が安心して地域で暮らせるための拠点です。今後、地域の子育て中の女性なども働ける場にして、近隣のお役に立てる存在に育て、お互いが支え合うよい関係を築きたいと考えています。
はしもと・みえこ
1971年、京都市生まれ。保育士として15年働いた後、叔父の依頼を受け、産業廃棄物処理の新会社を設立して社長に。障害のある人の雇用に努め会社は昨年9月、厚労大臣表彰を受けた。現在は9人が働く。総合支援学校などからの実習生受け入れにも取り組み、2022年からは京都市伏見区にグループホームを開設した。山科区在住。