ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
ともに生きる

京都新聞愛の奨学金

昨年度奨学生が報告

コロナ禍で経済的支え
応援に感謝の言葉続々

(22/04/12)


「不安消え未来信じる」「頑張る勇気や力もらった」…


 「京都新聞愛の奨学金」の昨年度の奨学生から、奨学金の使途の報告書や寄付者へのメッセージが京都新聞社会福祉事業団に届いている。2年以上続くコロナ禍の中、奨学金が学業継続や進学、就職への経済的な支えとなり、巣ごもり状態で孤立しがちな日々の心の支えになっているという。「顔も名前も知らない私たち」を支援する多くの寄付者の存在に感動し、感謝する言葉も寄せられた。(文中の学校、住所は支給時)


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「京都新聞愛の奨学金」を受けた学生、生徒から届いた報告書。奨学金の使途や寄付者への感謝の気持ちが記されている
 愛の奨学金は京都、滋賀在住者が対象で、2021年度は公募の一般の部で高校生、大学生・専門学校生あわせて282人、交通遺児の部、定時制・通信制高校生の部、児童養護施設高校生を含めると462人に支給した。返済不要の給付型で、高校生は年9万円、大学生・専門学校生は同18万円、児童養護施設高校生は3万円。

 京都新聞社会福祉事業団が発足した1965年から本紙「誕生日おめでとう」コーナーへの寄付金などをもとに実施。コロナ禍を受けて拡充し、昨年度は過去最高の総額4575万円を支給した。

 報告書からは、出口が見えないコロナ禍で苦悩する姿がうかがえた。母親が繰り返し休業になったひとり親家庭の女子高校生(京都府)は「毎日の生活もふんばれないような」状態になり、「この先どうしていったらいいのかと思い悩む中で奨学金をいただき、本当に助かりました」と心境を吐露。

 女子大学生(京都市)は「大学に通う時間が少なくなり、友達や周りの人と会話をする機会も減り、ずっと暗い気持ちでいた」が、寄付金に添えられた寄付者からの励ましの言葉に「明るい未来を信じて頑張ろうと思いました」。「理想とかけ離れた生活を強いられ、精神的にもダメージを負った」という男子大学生(京都市)は、奨学金が寄付金で成り立っていることを知って「助け合いの心を持つことが人間性の向上、豊かな生活を送るための一歩なのだと気づかされました」と記した。

 奨学金の使途は、学費、通学費、参考書費はじめ、オンライン授業用パソコン、タブレット端末の購入費、英語検定料などで、絵の具や筆の購入費も。「画材購入のためのアルバイトを減らせたので作品づくりに集中できました」(女子高校生・滋賀県)という。

 看護師の病院実習用にスーツを新調した女子専門学校生(京都府)は、コロナ禍で着る機会が減ったが、「スーツを見るたびに、私はたくさんの人に支えられているんだと感じ、原動力にしています」と記した。児童養護施設に入所する男子高校生(京都市)は「就職しかないと思っていたけど、進学も選択肢に入れられるようになった。自分の好きなこと、得意なこと、やって楽しいことを生かしたいと思っています」と、自立するときの資金に充てるという。

 寄付者の言葉も、奨学生にしっかりと届いたようだ。「応援していますという言葉をとてもうれしく思った。会ったこともない、顔も知らない私たちにそんな言葉がけ。金銭的な助けだけでなく、心の助けもいただきました」(女子高校生・滋賀県)、「いつも思い出し、勉強や学校生活で苦しい時に頑張る勇気や力をもらっています」(女子高校生・京都府)。

 「励ましの言葉に『無理はしないでね。楽しいことがあるといいね。心配しているよ』とあった。自分の存在を肯定してもらえているような、大きな光に包まれているような感覚になった」として、「この奨学金が『愛の奨学金』という名称であることの理由が分かった気がします」(女子高校生・滋賀県)という生徒もいた。


本年度の愛の奨学金は、公募の一般の部と交通遺児の部への申請を5月2日まで受け付けている。募集要項と申請用紙は同事業団ホームページに掲載している。