ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
ともに生きる

京都新聞社会福祉事業団

写真

書家・坑迫柏樹さん 「ともに生きる」揮毫
「理想の社会表す言葉、自然体の境地で」(24/03/25)



写真
力強く筆を走らせる杭迫さん(京都市伏見区)=撮影・奧村清人
 京都新聞社会福祉事業団が来年度に迎える設立60周年に合わせ、活動理念「ともに生きる」の書を、書家杭迫柏樹(くいせこ・はくじゅ)さん(89)が揮毫(きごう)した。「自然体の境地でしたためた。理想の社会像に通じるすばらしいメッセージだ」と共感の思いをこめたという。

 京都新聞社会福祉事業団は、京都新聞社の福祉事業部門を独立させて1965年3月に発足した。一人一人の命を大切にみんなが助け合って生きる社会を目指す理念のシンボルとして、京都府と滋賀県で行う福祉事業や募金の呼び掛けなどさまざまな場で「ともに生きる」と掲げてきた。

 同事業団設立60周年を機に杭迫さんに揮毫を依頼した。

 日展内閣総理大臣賞や日本芸術院賞を受賞し、日展名誉特別会員の杭迫さんは、京都新聞と京都新聞社会福祉事業団が主催のチャリティー美術作品展にも書を寄贈してきた。

 京都市伏見区の自宅で、早朝から筆を手にする。「ともに生きる」の揮毫について杭迫さんは、70〜80枚の中から選んだ書を壁に貼って3日間見比べた。そのうえで「無理と無駄がない、最も自然体で書けた」。そう判断した書き出しの数枚から選んだという。

写真
「ともに生きる」というメッセージへの共感を語る杭迫さん
 自ら歩んできた表現の道に関して「若い時はさまざまな工夫を試みて右往左往し、壮年期には鋭く個性を研ぎ澄まして峻険(しゅんけん)さを増す。経験を重ねた先にようやく、そのどちらでもない自然体の境地にたどりつく」としながらも「若年と壮年時の経験は決して無駄ではない。成熟に至るまでに必要な積み重ねだ」と語る。

 そのことは、ともに生きるというメッセージと重なる。「生まれたばかりの子から青壮老年の各世代、さまざまな職業、すこやかな人やハンディがある人…すべての人々がともにあらんとする理念を象徴する言葉だ」

 「卒寿記念 杭迫柏樹の世界展」は、11月19日から24日に京都文化博物館6階(中京区)で催される。自身の集大成として「意気を新たにすべし」と年頭に誓ったという。